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大阪高等裁判所 昭和47年(ネ)483号 判決

控訴人

佐藤数子

右訴訟代理人

田村徳夫

外二名

被控訴人

藤野勝子

右訴訟代理人

山本登

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は、主文同旨の判決を求めた。

被控訴人代理人は、請求の原因として、

「一、被控訴人は控訴人に対し、次のとおり合計金八二万円を貸し付けた。

(貸付日) (貸付金額)

(1)  昭和三六年三月 七日 三二万円

(2)  同年四月一〇日 五万円

(3)  同年六月一三日 一〇万円

(4)  同年六月三〇日 三五万円

なお、(4)の貸金について、原審においては貸付日を昭和三六年五月四日と主張したが、その後の調査の結果、これを昭和三六年六月三〇日と主張を訂正した(昭和四九年二月一九日の当審第六日口頭弁論期日において陳述した同月六日付準備書面による訂正)。

二、控訴人は昭和三七年五月六日被控訴人に対し、前項(4)の貸金に対する一部弁済として、金一四万八、〇〇〇円を支払つた。

三、控訴人は、被控訴人に対し、第一項(1)ないし(3)の貸金及び(4)の貸金残額に対する一部弁済として、昭和三七年九月五日金一一万円、同月一四日金二万円、同月一八日金一万三、〇〇〇円を支払つた。

右弁済については、当事者の指定はなされていないので、法定充当によるべきである。

四、よつて、被控訴人は、控訴人に対して前記(1)ないし(4)の貸金残額合計金五二万九、〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和三九年二月八日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

との判決を求め、控訴人代理人は、答弁として、

「一、請求原因第一項の事実は否認する。

ところで、被控訴人は本訴請求債権(4)の貸付日を当初昭和三六年五月四日と主張していたが、これを昭和三六年六月三〇日と変更した。しかしながら、右の如き変更は著しく時機に遅れたものであり、許さるべきではない。すなわち、控訴人は本訴において当初より一貫して否認し、被控訴人に対し貸付の具体的立証を求めるとともに、その反証を提出してきたのみならず、被控訴人は昭和三七年一一月一七日生田警察署における供述及び昭和三八年三月一三日同署供述以降小型大学ノート(控訴人の文書提出命令の対象物件)に基づき具体的にその日時を特定して貸付の状況を主張し、その主張の適否をめぐつて攻防がなされている本件において、従前その片鱗すら示されなかつた昭和三六年六月三〇日の貸付を主張することは、既に約一三年を経過した当時の事実を調査して反証をなさざるをえない負担を控訴人に強いるものであり、著しく衡平に反するものである。

二、請求の原因第三項において主張する一部弁済金は、控訴人と被控訴人の長男である訴外藤野勝久との間の土地売買代金の内金として、同訴外人の代理人である被控訴人に交付したものである。」と述べた。

証拠〈略〉

理由

一控訴人は、被控訴人が請求の原因第一項(4)の債権の貸付日として「昭和三六年五月四日」との主張を「同年六月三〇日」と変更したことは、著しく時機に遅れたものであり、許されるべきものではない旨主張する。しかし、右の如き貸付日についての主張は請求それ自体に関するものであるから民事訴訟法第一三九条所定の攻撃防禦方法には該当しないものであり、また、右の如く同一の貸金債権についての貸付日の主張の変更は、訴の変更ではなく、単なる請求の原因の訂正と解するのが相当であるから、民事訴訟法第二三二条所定の訴の変更にも該当しない。しかも、本件訴訟の経緯に鑑みれば、右の訂正によつて著しく訴訟手続を遅滞させるものとは認められない。

したがつて、控訴人の右主張は失当である。〈後略〉

(白井美則 弓削孟 篠田省二)

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